新しい出逢いを求めて。休暇に浸る読書の世界

暮らしの特集 暮らしの特集

読みもの

いつもとは少し違う本を読むのが、長いお休みの定番の過ごし方。新しい出会いを求めて、知らない世界を教えてくれる短歌集の本や、いつもの料理をアップグレードさせてくれるレシピ本、上下巻のちょっと長めの物語に挑戦するのもいいかも。私だけのリラックススペースを作ったら、とっておきの読書時間の始まりです。

Share

twtter facebook line

ひさしぶりの長いお休み。

やりたいことはいろいろと浮かぶけど、今日は読書をして過ごすことにしました。

「今日はとことん本を読む日」と決めて、昨日のうちに紅茶に合うお菓子を買っておいて準備は万端。

ぽかぽか日の当たる場所に椅子とサイドテーブルと、お気に入りの紅茶を用意。

私だけのリラックススペースを作ったら、とっておきの読書時間の始まりです。

◆心を整える短歌の世界。『千年後の百人一首』

きらきらとした装丁で、思わず手に取ってしまったのは『千年後の百人一首』(リトルモアブックス)。

アーティスト・清川あさみさんと詩人・最果タヒさんが共同で手がけた一冊です。

清川さんの作品と、最果さんの世界観溢れる現代語訳の詩が百首の歌に添えられていて、短歌をより身近に感じることができる一冊になっています。

『春過ぎて 夏来にけらし 白妙の衣ほすてふ 天の香具山』
もう春は過ぎ去り、いつのまにか夏が来てしまったようですね。香具山には、あんなにたくさんのまっ白な着物が干されているのですから。)

持統天皇が詠んだこの歌。来たと思ったらあっというまに去ってしまう春を、名残惜しんでいるような気がしてつい目を止めてしまった一首です。

最果さんはこの歌に出てくる「衣」を使って『時の流れというものを私は見たことがないのだけれど、川の流れのように光を反射させながら、透明のなにかが今も目の前で立ち去っていくように思う。』と季節の移り変わりを表現されていて、とても素敵。

清川さんの白と青の糸を使った刺繍も「白妙の衣」を想像させてくれます。

特に詩の中で表現された「空の青が、生きかえる季節」の言葉がきれいで、これからやってくる初夏を楽しみにしてしまいそう。

口に出して読んでみると、日本語の響きが流れるようできれい。つい顔がほころんでしまいます。

写真を見ながら、歌を読んで、声に出して、書き写して…久しぶりにふれる百人一首の世界。

なんだか心が整う時間が過ごせそうです。

◆今日の旬を知りたいときに。『旬菜ごよみ365日』

旬の食材とうつわの写真に惹かれて手に取ったのは、ワタナベマキさんの『旬菜ごよみ365日 季節の味を愛しむ日々とレシピ』(誠文堂新光社)。

一年を通して旬の食材にまつわる日々が描かれているレシピ本です。

どのページの写真もとてもきれいで、見入ってしまいました。

料理家のワタナベマキさんが旬な素材で作るレシピ。手の込んだものというよりも、シンプルなものがほとんどで、すぐにでも真似できそうなものばかりです。

おいしそうな料理が載っている日もあれば、贈り物にもぴったりな手土産や素敵なうつわが、エッセイのような短い文章とともに綴られていて、読み物としても楽しめそうです。

4月27日は「サラダ用に春雨を常備する」日。

中華の定番でもある春雨は、サラダにすればお助けメニューに。ごまをたっぷりふりかけるのがおいしく仕上がるポイントなんですって。

巻末に料理のレシピも掲載されているので、献立に困ったときに頼ろうかな。今日は何の日だっけ、とぱらぱらとめくるのも楽しい一冊。

◆少しだけ不思議な世界を味わえる『三ノ池植物園標本室』

優しげな線画に惹かれて手に取ったのは、ほしおさなえさんの『三ノ池植物園標本室』(ちくま文庫)。

<前編>植物の刺繍に長けた風里が越してきた古い一軒家。その庭の井戸には芸術家たちの悲恋の記憶が眠っていた――。『恩寵』完全版を改題、待望の文庫化!
<後編>井戸に眠る因縁に閉じ込められた陶芸家の日下さんを、彼に心を寄せる風里は光さす世界へと取り戻せるか。『恩寵』完全版、感動の大団円。解説 東直子

主人公の風里は、会社員生活に疲弊して退職したあと、古い一軒家に出会います。一目惚れしてしまった風里は住むことを決め、近くの植物園で働き始めるようになりました。

植物園が舞台のほのぼのとした物語かと思いきや、住んでいる家にまつわる話が絡んでいくようになると謎や不思議に包まれていきます。

ファンタジー要素もある幻想的な描写は、惹き込まれるより、むしろ飲み込まれてしまうくらいの怖ささえ感じられます。だけど、その独特な世界観が心地よく、後半はいつまでも浸っていたくなる不思議な魅力のある一冊。

物語のなかで至るところに登場するのは植物の名前。なかでも風里が変わるきっかけになるテッセンは、「どんな花だったかな」と読み終わってから調べてしまうほど。

お散歩中に見かける植物にも、一つひとつ意味があるのかもしれないなと新しい視点を持つことができました。

人だけではなく家や植物…。謎が解けていくにつれ、そういった全てのものとの繋がりを改めて考えることのできる、心地よい読後の余韻に浸りたくなる一冊でした。

***

ふと、顔を上げるといつの間にか空は茜色。

気が付いたらすっかり夕方になっていました。

一日中読書をしたからか、少しだけ疲れた目を瞑ってほっと一息。

寝るまでの時間は、何を読もうかな。

たまにはこんな風に本の世界にどっぷり浸る日だって悪くないよね。