しんしんと冷え込む季節が過ぎて、静かに訪れた芽吹きの春。
あたたかい日差しをたっぷりと浴びた山菜を、おうちで味わうのがひそかな楽しみ。
「ふきのとう」「たらの芽」「わらび」...とたくさんの山菜があるけれど、思い出深いのは幼い頃に祖父が裏山で採ってくれていたわらび。祖母が炊き込みご飯にしてくれて、毎年みんなで口いっぱいにほおばっていたのを思い出します。
急に会いたくなったので久しぶりに祖父母のおうちに向かうと、ほのかに漂ういい香り。扉を開けると、慣れ親しんだあの炊き込みご飯がそこにありました。
「これ好きだったよね。」と、そっとほほえむ祖母の姿とおいしそうなお料理の数々。
話に花が咲いて、いろいろと聞いてしまいました。
◆山菜を春に食べる理由

しゃきしゃきの食感と、天然の苦みがくせになる山菜。
「山野に自生して食べられる植物」を一般的に山菜と呼んでいるそうです。
春の味覚として親しまれているのは、「春の皿には苦味を盛れ」ということわざがあるように、冬の間に縮こまっていたからだに刺激を与えて、体を目覚めさせる役割があるからなんだとか。
冬眠から目覚めた熊が「ふきのとう」を一番初めに口にするといわれているのも、苦みをからだに取り入れて、眠っていたからだを目覚めさせるためなんですって。
◆おうちで楽しむ山の恵み

「わらび」
わらびは全国に自生するシダの仲間で、山菜として食べられている物は若芽。
わらびの根にはデンプンが含まれていて、ここからわらび餅のもととなるわらび粉が作られるんだそうです。
選ぶときは、表面についた産毛と茎の太さ、色に注目するといいみたい。たくさん産毛がついていて茎が太くて短い物、あと首がまだ上を向く前くらいの物が柔らかくておいしい物なんだそうです。
茶色くなっているのは鮮度が落ちている証拠なので、鮮やかな緑色の物を選ぶといいんだとか。
「たらの芽」
たらの芽はウコギ科のタラノキの新芽のことで、新芽の部分を山菜として食べます。独特な苦みや、もっちりした食感が春を感じさせてくれる山菜の定番。
今も山で自生しているけれど、栽培も始まっているから気軽に手に入る食材になっているそうです。
選ぶときは、つぼみのところが開いて3~5cmほど芽が伸びたくらいのものを。伸びすぎたものは、苦みやえぐみが強いので気をつけて選ぶといいみたい。
「ふきのとう」
春を代表するさわやかな苦みがたまらないふきのとう。古くから早春の食材として親しまれています。
ふきのとうはキク科フキ属の多年草で、日本原産の山菜。ふきのとうはつぼみの部分のことで、花が咲いたあとに地下茎から伸びる葉「ふき」が出てくるんですって。
選ぶときは、つぼみがまだ硬く閉じていて、周りの葉で花芽が見え始めるくらいまでの物がおいしいそう。大きくなりすぎると、苦みが強くなるので小ぶりの物を選ぶといいそうです。
「菜の花」
菜の花は、山に自生する山菜には含まれないけれど、あたたかくなると食べたくなる春の味。「なばな」とも呼ばれていて、アブラナの花芽で同じ仲間に菜種油を取る為の品種もあるみたい。
選ぶときは、花と茎に注目。なるべく花が咲いていない物で、葉や茎がしゃきっとした新鮮なものがいいんだとか。茎の切り口が茶色くなっていないものを選ぶといいそうです。
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からだをシャキッとさせるためにも、苦みを上手に取り入れられるといいな。
今晩は、山菜料理で食卓を彩ってみようと思います。